日々のあれこれ時々、地盤塾。

地盤塾主宰者の千葉由美子が、日々の中で良いと思ったことや気付いたこと、地盤塾の様子などを綴っています。どんなことに気を留めて、どんなことを考えているのか、知ってもらえたら嬉しいです。

現場で土質確認 番外編 土の採取方法について

「現場で土質確認 関東ローム層が出るか③完結編」の前に・・・

宅地地盤における土の採取方法を紹介します。

 

土を採取する目的は「どんな土なのかを確認する」ことです。まず、現場に入る前にどんな土が出そうか近隣ボーリングデータで出そうな土の種類の当たりをつけます。そして、どんな土が出たらどういう結論が導き出されるのかを想定します。やみくもに現場に入って土をとっても、結果を活かせず調査費用が無駄になりかねません。なんでもそうですが、地盤調査を行う場合は目的をはっきりさせ、その目的に合った調査方法を選択することが重要です。

 

土を確認するとはもう少し具体的に言うと、粘性土か、砂か。関東ローム層などの特殊土が存在するか。はたまた人の手が加わった盛土ではないか。もっと言うと、瓦礫やゴミなどの産業廃棄物が埋まっていないか。それから、補強工事に大きな影響を及ぼす腐植土が出るか。などです。

土を確認して何が分かるかというと、「土の特性による地盤の硬い・軟らかい(地盤判定に直結する)」や、「地盤に潜むリスク」です。地盤に潜むリスクは「液状化」や「腐植土や盛土による不同沈下事故と補強工事の施工方法」がメインです。他には、擁壁計算のための土質決定というのもあります。

 

 

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それでは、採取方法を紹介します。宅地地盤における採取方法なので、基本調査はスウェーデン式サウンディング試験です。それにプラスして行うものが主流となります。

 

まず「ハンドオーガーボーリング」その名の通り人の手で土を掘りだします。写真左側にT字にハンドルがついたロッド(棒)がありますが、このハンドルを回転させてロッドの先につけたオーガーと呼ばれる採取器具を土の中に貫入させていきます。貫入させるときにオーガーの中に土が入ったり付着するので、それを引き上げて土を取り出します。砂混じりの粘性土、粘性土混じりの砂質土など軟らかめの時は左のポストホールを使い、比較的硬い土や関東ロームなどなるべく乱したくない場合は右のスクリューを使います。

オーガーが大きめなので土をしっかり取れますが、人力なので貫入力には限界があります。土の固さにもよりますが大体2~3mが限界です。

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NPO住宅地盤品質協会 「簡易なサンプリング方法(案)」より

 

次は「スウェーデン式サウンディング試験の試験孔を利用したサンプリング」です。これはハンドオーガーに比べて径が小さいので比較的労力を使わずに採取できます。写真左側はSWS試験でできた孔の壁をこそげ取ります。孔壁が自立していることが条件ですが、砂質土・粘性土・腐植土などが採取できます。写真右側のスクリュータイプはSWS試験の自動機械のロッドの先に取り付けられ、自動機械の回転能力を使って貫入・採取するものです(もちろん人力でもよいですが)。写真左に比べるとスクリュータイプは連続して土を確認できるので、確認したい土の出る深度の境目が分かりやすいというメリットがあります。弱点は、緩い砂や水位が高いところなど粘性が低くスクリューに付着しないものは適していないことです。

どちらも採取深度は5m程度までです。比較的簡単な採取方法ですが径が小さい分、採取量が少ない・他の深度の土が混じりやすいなどのデメリットがあります。ローム層の他、砂質土確認液状化簡易判定目的)や腐植土確認(地盤判定・補強工法の選定や設計目的)などによく使われています。

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NPO住宅地盤品質協会 「簡易なサンプリング方法(案)」より

 

これらの方法は特殊な器具が必要なので地盤会社に依頼することになります。

 

それに対して、特殊な器具なしで確認できる方法もあります。それがこちらです。「ブロックサンプリング」です。

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北海道大学 地盤物性学研究室HPより

 

この方法の最大の特徴は「乱さない試料(土)を取れること」です。先に紹介した方法だと、掘ったりこそげ取ったりねじったりしたときに元の地盤があらかた崩されてしまいます。それに対してこの方法だと、まず取り出したい土の大きさを決め、その大きさを成形するために周辺の土を掻き出し、下部を切り離してブロックごと持ち上げるので、ブロックの内部は乱されないまま(土層をそのままの形で)土を取ることができるのです。

これに必要な道具は、基本的にはスコップのみです。JIS規格の方法では圧縮試験に利用するため試料の変形・変質を防ぐ目的で枠をはめますが、とりあえず今回のように「土質確認」のみであれば、掻き出すだけで十分です。

道具はスコップのみ、作業は掘り出すだけなので、土質確認者が立ち合えない場合に現場でこの方法で土を持ち帰る、というような使い方ができます。

ただデメリットは・・・人力なので確認したい土の深度が深い場合は困難であること、確認したい土の深度があまりにも深い場合は重機が必要になること、です。

 

そして、土質確認をする上で一番シンプル・確実なのがこの方法、

「重機で地面を掘り起こし、地盤の断面を目視する」です。この方法で何がいいかと言うと、なんと言っても地層の境目を目視できることなのです。

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関東ローム層の確認が目的だった現場ではこの方法で土質確認をしました!

 どんな風に判断したのか、「現場で土質確認 関東ローム層が出るか③完結編」も読んでもらえると嬉しいです(^^)

 

 

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