日々のあれこれ時々、地盤塾。

地盤塾主宰者の千葉由美子が、日々の中で良いと思ったことや気付いたこと、地盤塾の様子などを綴っています。どんなことに気を留めて、どんなことを考えているのか、知ってもらえたら嬉しいです。

地盤調査方法について ー法的・指針的なものー

地盤塾は宅地地盤の相談にも乗っています。通常は具体的な案件がほとんどなので公に紹介できませんが、今回の質問は広く知って頂きたいことだと思ったので紹介することにしました。

 

【質問内容】

「地盤調査方法について、何か定められているものはありますか?」

 

地盤調査方法について法的・指針的なものがあるのか、という問いです。確かに、住宅建築従事者の方たちはなんとなく「木造はSWS(スウェーデン式サウンディング)試験」で「S造・RC造はボーリング(標準貫入試験)」というイメージを持たれているかと思います。

では「なんとなく」のその根拠は?ということで、法的・指針的なものがあるか見ていきます。

 

実は、国土交通省告示第1113号で地盤調査について定められています。
「告示1113号」の内容については、インターネットで「告示1113号」と検索すると確認できます。参考に、告示1113号が全て書かれて分かりやすく表示されている研究室のURLを添付します。

http://geotech.ocean.cst.nihon-u.ac.jp/ips/hourei/kokuji/1113.html

第1項を見ると、地盤の許容応力度・基礎杭の許容応力度、つまり地盤の強さの判断・杭の設計のための地盤調査方法は10種類と指定されています。

 

1)ボーリング調査

2)標準貫入試験

3)静的貫入試験

4)ベーン試験

5)土質試験

6)物理探査

7)平板載荷試験

8)載荷試験

9)くい打ち試験

10)引抜き試験


SWS試験は「3)静的貫入試験」の中に含まれます。表面波探査試験は「6)物理探査試験」に含まれます。
(しつこいですが・・第1項の目的に「地盤の揺れ具合」は含まれていません。これを見ても「揺れの調査と地盤の強さを調べる調査は別物」ということが分かるかと思います)

第2項では、地盤の強さを判断するための、地盤の許容応力度を求める式が記されています。第2項を添付します。

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簡単に言うと、

(1)は標準貫入試験で求められた数値を使って出す式

(2)は平板載荷試験で求められた数値を使って出す式

(3)はSWS試験で求められた数値を使って出す式

となります。許容応力度を算出するためにはこれらの式を使うこととなり、これらの式を使うためには所定の地盤調査を行う必要がある、もしくは換算値が必要ということになります(換算の換算、というやり方もありますが、その分誤差が大きくなるのであまり勧められるやり方ではありません)。
ちなみに、第2項の文中に出てくる「建設省告示第1347号第2に定める構造計算」では、地盤調査の判定結果を踏まえた基礎設計(直接基礎・地盤補強+直接基礎・基礎杭)について書かれています。

ただし、「この構造にはこの試験」という決まりは特に書かれていません。

しかし、第2項の一番下にNswについて「SWSにおける1mあたりの半回転数(150を超える場合は150とする)の平均値」という記載があり、これ(1mあたりの半回転数≦150)がSWS試験の限界値であることがわかります。

私たちがよく言うのですが、SWS試験は「弱いかどうかを確かめる試験」なので、あまり固い地盤は調べることができません。それでも、Nsw=150で許容応力度を算出すると120kN/㎡になります。かなり重い建物にも対応できそうですが、確認申請機関からは、S造・RC造の建物や基礎の接地圧が50kN/㎡を超える建物は標準貫入試験での算出が求められるようです。また、SWS試験は適用深度が10m程度なので、S造やRC造の地盤補強や杭基礎のための支持層確認ができないことがあります。標準貫入試験の適用深度は60mくらいと言われています。
ということで、建築従事者の方たちの「漠然と木造はSWS、S造・RC造はボーリング」という感覚はだいたい合っている、ということになります。

ただ、木造でも基礎の接地圧が30kN/㎡を超える場合は、地盤調査会社にその旨を伝えて調査計画を立てるのが理想的です。
例えば、関東ローム層(もしくは砂岩・土丹など)が出そうならSWS試験プラス土質確認とか、地盤が悪そうで補強が必須のようであれば補強の設計で必要になりそうな土層・支持層を確認するとか、建物の重さ次第で確かめたいことが変わってくることがあります。

 

最後に、「ではやはりSWS試験は使えないのか」という声が上がりそうですが、SWS試験のメリットはきちんとあります。

小規模建築物基礎設計指針でもあるように不同沈下事故の原因の79%が宅地造成に起因していて、このリスクを見極めるためには建物下の地盤のバランスの良し悪しを調べることが重要となります。具体的には、山側と谷側、一部埋め戻し、軟弱層や支持層の傾斜などで、これらを確認するには調査箇所を多く取り、建物の端と端・中央と端のバランスを見ることがとても有効です。そのためSWS試験では「建物四隅と中央」を行うことが一般的なのです。

 

普段何気なく地盤会社に依頼している「地盤調査」は、このように定められているところに沿って行われているものなのです。

新しい調査方法を採用する場合、その調査は「何を調べられるのか」「どんな数値が取れるのか」を確認することが重要です。