現場で土質確認 関東ローム層が出るか②
前回の「現場で土質確認 関東ローム層が出るか①」で、現場で土質確認をする意味と注意点を建築基準法施行令第93条を基に書きましたが、
https://jibanjyuku.hatenablog.com/entry/2019/04/16/125038
今回は、それらを踏まえて現場での土質確認の事前準備について書きます。
通常はあまりやらない現場でのローム層確認。なぜ現場に出向くことになったのか、経緯と資料となる調査データやボーリングデータから説明をします。
少し長いですが、ローム層確認の醍醐味が分かりますのでがんばってついてきてください!
スタートは、知り合いの工務店さんを通して設計士さんから「地盤補強の工法選択アドバイス」のご依頼を頂いたことでした。
SWS(スウェーデン式サウンディング)試験の結果は「台地で関東ローム層が分布している」ことを理由に「直接基礎判定(地盤補強不要)」でした。しかし「試験数値があまりにも弱いので念のため地盤補強をしたいが、候補の補強工法が適切かアドバイスが欲しい」というご依頼でした。
ご依頼主は地盤補強の基本的な知識(工法理論等)をお持ちで、建物計画・地盤調査結果・敷地利用計画に沿って「採用に適していると思われる工法の候補」を複数選定しており、私たちはそれらの工法について裏付けになるような工学面と費用感のアドバイスをしました。
工法理論、地震時の影響、液状化への効果などについてメールでの質疑応答を何度か繰り返すうちに、
「お会いして方針を決定したい」
と要望を頂いたので面談型のコンサルティングへ切り替えます。
せっかく双方とも時間をおさえて面談をするので、
現場で地形や土質を確認し、より確実な情報を元に方針を決める
ことにしました。なぜ現場へ出向く必要があるのかを説明するために依頼案件の情報を整理します。
1)調査結果は「台地で関東ローム層の分布」を
理由に「直接基礎」だった
2)SWS試験結果は表層からGL-4m付近まで
軟弱な数値の自沈層が見られる
3)近隣のボーリングデータと比較すると、
ボーリングのN値とSWSの換算N値との数値に開きがある。
4)試験数値の低さが不安(なので補強するつもり)。
5)数値が弱い以上、補強不要と判断するためには
関東ロームの確認が必須。
補足説明をすると、まず2)について、SWS試験の調査データの一部がこちらです。
注:物件が特定できないよう、実物とは違うデータシートを使用し、データは判定へ影響せず今回のポイントを逸脱しない範囲で数値や感触を変えています。
表層からWsw=0.75kN(いわゆる75kg自沈)以下のかなり軟弱な数値の自沈層が続いています。通常、台地で関東ローム層の分布が見込める地盤ではなかなか見ない数値です。そこで、判定の通り関東ローム層の分布が見込める台地なのかを地形図で確認したところ、調査地(計画地)の地形は確かに台地でした(場所が特定されてしまうので地形図は出せないことをご了承ください)。
次に、そもそも関東ローム層が分布する地域なのかを近隣ボーリングデータで確認しました。こちらも確かに、近隣ボーリングデータでは関東ローム層の分布が確認されていました。
ですが、問題はボーリングデータのN値とSWS試験の換算N値の数値の開き
です。それが、3)の説明です。近隣ボーリングデータがこちらです。
こちらも場所が特定できないようにデータの一部のみ貼り付けていますが、N値の折れ線グラフを見るとN値は5前後から10までの間を推移しているのが分かります。ボーリングデータのN値とSWS試験の換算N値はある程度相関性があると言われています。とすると、このボーリングデータとSWS試験データを比較したときに数値に開きがあると言わざるを得ません。
何が問題かというと、数値に開きがあるということは
ローム層とは違うものの分布が疑われる
ということなのです。
こうなってくると、未確定のまま「ローム層の分布が見込めるから」といって直接基礎で進むのは当然疑問が残り、4)の懸念に繋がります。そこで、
未確定なら確定させればよい
のが、5)の関東ローム層の確認、というわけです。
ということで、今回の現場で土質を確認する一番の目的は
①表層からGL-2mまでの異様に弱い層はローム層か否か
です。
ローム層であれば数値に関係なく直接基礎
で大丈夫です。しかし、
ローム層でなかった場合は数値により地盤補強が必要
となります。この差が大きいことはお分かりだと思いますが、つまり
ローム層の有無で調査結果が変わる
ということなのです。また、
②ローム層でなかったとしたら土質は何か
も重要です。ゴミや腐植土は不同沈下の原因に繋がります。補強工法の選定にも影響してきます。なぜなら、地盤補強工法は様々な種類がありますが、どれも地盤や土質の向き・不向きがあるからです。
現場で行うことはシンプルです。「土質を確認する」それだけです。しかし、その目的は判定の妥当性と補強工法の選定に関わる重要なものなのです。
したがって、
安易に土質を決定することは許されません。
また、そもそも論として「関東ローム層の分布が見込める地域」でないとローム層の確認をする必要性があまりないことも理解しておかなければなりません。
例えば、明らかに川沿いの低地で近隣ボーリングデータでもローム層の分布は確認されないのに「関東ローム層が出れば直接基礎だ!」と期待(?)してローム層確認をすることは費用がかさむだけでナンセンスです。
その点でも、数値が異様に低いものの台地に位置し近隣ボーリングデータでローム層の分布が確認されていることから、今回はローム層の確認を行う意味があるのです。
前置きが長くなる理由、お分かりいただけたでしょうか。
次回(こそ)、現場での実際の確認作業について書きます。
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