現場で土質確認 関東ローム層が出るか①
先日現場で関東ローム層の分布の有無を確認してきました。
ローム層の確認について、確認する理由・確認方法・判定結果などを書いていきます。
まず、現場の話の前に「確認する理由」について書きます。
地質・地盤屋がこのミッション(タイトル)を見ると緊張感が出ます(たぶん)。なぜなら、
1)小規模住宅の地盤判定が変わる可能性がある
2)乱されていないことを慎重に確認する必要がある
からです。
これらの理由は「建築基準法施行令93条」の「表に掲げる地盤の許容応力度」から来ています。どういう表かというと、こちらです。
http://best.life.coocan.jp/k-rei/
この表が言っていることは、
「この地盤と確認出来たら、地耐力はこれくらい見込んでもいいよ」
ということです。つまり、「ローム層」が確認出来たら50kN/㎡の地耐力が見込める、ということです。
よくあるのは、SWS(スウェーデン式サウンディング)試験ではそれほど強い数値が出ずに「地耐力は30kN/㎡」という地盤判定しか出せないところ、土質確認を行いローム層の分布が認められ、
「ローム層が確認できたため地耐力は50kN/㎡」と判断が変わるパターンです。
ではなぜ地盤判定が変わるかというと、
SWS(スウェーデン式サウンディング)試験の特性と関東ロームの特徴が絡んでいることが要因です。
SWS試験は元々「弱いか弱くないか」を判断する試験です。試験方法は、尖ったネジ状のスクリューポイントを回してねじ込んでいきます。加える力は回す力のみ(静的貫入といいます)なので固い層に当たると突き進むことが困難ですが、その代わり軟弱かどうかの境目を調べることと、たくさん調査箇所を取って建物配置下の地盤のバランスの良し悪しを確認することには適しています。
また、ロームは土の構成上、尖ったものに対する抵抗力がそれほど強くありません。例えば、豆腐につまようじを突き立てると大して力を入れなくても深くまで刺さります。
ですが、つまようじより重いお皿を載せても崩れることがない
ことをイメージしてもらうといいかもしれません(この写真は豆腐をペーパーで覆ってしまっていますが・・)。
ちなみに、豆腐(地盤)がどこまで重いお皿(建物)に耐えられるか調べる方法は圧密試験です。ただし、標準貫入試験→乱さない試料の採取→室内試験の手順で行い、とても費用がかかることと、そのため調査箇所を多く取れないので地盤のバランスの良し悪しを確認するには向いていない、ということがあります。どんなものでもそうですが、試験もメリット・デメリットがあり万能なものはない、ということです。
ということで、
特に関東ローム層は、尖ったものには弱いがベタッと押されることには強い。
とイメージしておくといいかもしれません。
二番目の「乱されていないことを確認する」はとても重要です。
何しろ、施行令93条が言っている地盤の地耐力は「乱されていない地盤」であることが前提だからです。これはローム層に限らず、どんな土、岩盤でもそうです。
では逆に「乱されている」とはどういうことでしょうか。
一番分かりやすいのは、人の手が加わっていることです。
(注:他のパターンは現場での話の時に説明します)
よくある「乱されている例」は、
・深さ3mの地下室があった
・ウドを栽培するための室(ムロ)があった
・畑利用していて深さ1m以上天地返ししていた
・砂鉄を取るための採掘場で地山をほぐしたあと埋め戻していた
などです。どれも人の手が加わっていますよね。
なぜ乱すとだめ(地盤工学的に)なのか。
特に関東ローム層が乱されるとだめな理由を述べます。
ご存知の方は多いと思いますが、関東ロームは富士山・箱根山・浅間山・榛名山などからもたらされた火山灰・軽石・岩滓などが堆積・風化したものです。
これらによって形成されるロームの構造は「蜂の巣構造」です。
この図を見ると分かりますが、ローム層の土は土粒子がアーチを形成し更にアーチ同士で繋がっています。外力はこのアーチの骨格を通じて伝達されるわけですが、アーチ構造は圧縮にとても強いので強度を発現できる、というわけです。アーチ橋が強いのと同じ原理ですね。
つまり、関東ロームはアーチが保たれているからこその強度なのです。
このアーチが崩れてしまうと外力を効率的に伝えることが出来ない状態となり、強度が一気に低下してしまうのです。
尖ったものに対する抵抗力が小さいのもこういう理由です。
また、ロームの土粒子は保水力があるため含水比がとても高い(含水比80%~150%前後)のですが、これも一度乱されると強度が低下する要因になっています。どういう状態を引き起こすかというと、転圧締固めが不能になってしまうのです。よく「うんでしまう」と言われる状態です。
この二つの理由から、関東ロームは乱すと地耐力が見込めないと言われます。
ちなみにロームとは土壌学上の用語で、粒度組成(どんな粒径の粒(土粒子)がどの割合で含まれているか)の組成具合を示すものです。「火山灰質」を示す言葉ではないんですね。
また、ロームに限らず固い地山(人の手が加わっていない地盤)がなぜ固いかというと、何万年・何十万年と自然の力(堆積・圧縮)によって締め固められているからです。これだけの年月をかけて締め固められたものを、人間が同じ圧力で締め固めることは容易ではありません。
土木で使用する巨大なローラーならまだしも、戸建て住宅で使うようなランマーなどの転圧機では圧力もたかが知れています。
だから乱されていないことを確認しなければならないのです。
崩した土で93条の地耐力を見込む。
ダメ・絶対! です。
次回は現場での確認方法・判定結果について書きます。
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大阪地盤塾 第1回「地形と地盤調査」 参加者全員の所在地のハザードマップを教材に。
3月27日(水)は、大阪地盤塾の第1回「地形と地盤調査」でした。
今回の参加者数は10名。まだまだ小ぢんまりですが(^^;)
小ぢんまりならゼミ形式でやろうかな、と机はI型に並べ、全員が顔を突き合わせるようにしました。
今回は地形の話がメインなので、しょっぱなから「土地条件図の探し方」という聞き漏らしたらついて行かれなくなる話なので、みなさん曽根氏の説明とテキストを真剣に追っています。
この土地条件図・航空写真・地形図は、国土地理院のホームページから閲覧することができます。
地盤塾では、どこから入ってどこをクリックするればよいか、何を閲覧すればよいか、といったところをステップを踏みながら説明していきます。
ホームページを順を追って説明するので・・・
みなさん、スマホやタブレットを取り出し、曽根氏の説明を聞きながら実際に地図を探して見ています!
地形って、馴染みがないと言葉で説明されてもよく分からないですよね。
なので、このような俯瞰イラストも差し込みながら説明しています。
これは私が新人のころ、文字だけでは地形のイメージが沸かない時によく見ていた図です。とても分かりやすいです。
更に、地形に関する地図だけではなくハザードマップの紹介もしています。
大阪、
それに対してちょっと簡素な香川・・(^^;)
そして、充実の三重!!(でもデータがギガクラス!)
「M-GIS」で検索すると出てきます。
などなど、参加者さん全員の拠点の自治体ハザードマップを教材にしています!!
ハザードマップは、お施主様がこれから長年暮らす土地や地域の災害リスクを事前に知ることができる手段のひとつです。
これからの時代、リスクは隠すのではなくお施主様と一緒に確認するもの、です。
また、近年の災害の多さ(特に東日本大震災以降)から、ハザードマップの管理者である自治体は、古いものを改訂したり、Web化したりなど、バージョンアップを繰り返しています。
そこで、宅地地盤の専門家である私たちは定期的に自治体のホームページをチェックしています。
なので・・・「みんな一緒だろう」と思って一度ダウンロードした地図を使いまわしていると、知らない間に更新されていて、お施主様から「古くないですか?」と指摘されてしまうかもしれません・・。定期的に自治体HPをチェック、気をつけましょう。
さて、地形の話に戻します。
「専門家って、難しい理論の話が好きだよねー」
ええ好きです。でも、今回は好きだから地形の話をしているわけではありません。実は、
地盤の事故は地形や地質(土)を的確に読み取れないことで起きているのです。
昔(30年以上前)は調査すらもしていなかった現場が多かったと思いますが、20数年ほど前から地盤調査や地盤補強工事を行うことが浸透し始め、平成21年10月に住宅瑕疵担保履行法がスタートしたこともあり、今ではほとんどの事業者が基礎着工前に地盤調査・判定・基礎選定を行っています。
それなら地盤の事故は年々減っているのでは?
そうなってほしいところです。
しかし、実際は減らず、しかも似たような原因の事故が毎年出ています。何故でしょうか。
小規模住宅と呼ばれる一般的な木造住宅の地盤調査は、スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験(エスエスしけん))を採用することがほとんどです。追加調査をプラスすることもありますが、このSWS試験が基本となります。
SWS試験はボーリング調査に比べて安くて手軽です。調査機の設置面積も小さくて済むし、なにしろ安いので調査箇所数を多く取ることができるので、
地盤の支持力(強さ)より比較的上部の地盤のバランスが重要視される木造住宅に向いている調査方法です。
しかし、安くて手軽なため、地盤のバランスは見られても
土そのものを目視することができません。
目視、ここが重要です。
実はこれがネックです。
危険な土の代表格「腐植土」
人為的な悪質盛土の「瓦礫・レンガ・ゴミなどの産業廃棄物」
これらは試験の数値だけで判断していては見極められないものたちです。
これが見抜けないために事故が減らない。毎年同じ過ちを繰り返すことになっています。
ではどうやって見極めるのか。
見極め方法がちゃんとあります。日本建築学会の「小規模建築物基礎設計指針」でも書かれています。
「地形・地質を見極めること」です。
なぜなら、腐植土や産業廃棄物が入り込んでいそうな要注意の地形が分かっているからです。どういうところかというと、
「河川沿い・山間の谷地・切り盛り造成・谷埋め盛土・擁壁裏の埋め戻し・傾斜地への腹付け盛土造成など」です。
そのため地盤塾第1回は、要注意な地形を見分けるための資料の探し方を学んでもらうのです。
これが分かると、地盤判定のポイントも補強工法の選定基準も分かってきます!
4月24日開催の東京地盤塾の会員さんはここを意識して受講してもらうと講座内容がさらに頭に入りやすくなります。
大阪地盤塾の会員さん、第2回のあとで復習講座を行うので、わからないところがあったらぜひ質問してください!
東京地盤塾 第1回は4月24日(水)開催、
大阪地盤塾 第2回は5月22日(水)開催です。
お問い合わせ・お申し込みは
E-mail:info@jibanjyuku.jp
Facebook 地盤塾グループもご覧ください。☟
https://www.facebook.com/groups/466731213857004/
南越谷 地盤塾プレセミナー・相談会 S造3階建て一部平屋の地盤補強
昨日(26日)は日建学院南越谷校で地盤塾プレセミナーを行いました。本日は後方から皆様の様子を見させていただきました。(^^)
セミナーを通して全体的に熱量を感じられました。地形を読む必要性、土地条件図や旧版地形図、航空写真、ハザードマップの説明も、熱心に聞いていらっしゃる方が多かったです。興味を持っていただいてとても嬉しかったです。
その中で、スマホで土地条件図を見ながら一心不乱に何かを確認している方がいらっしゃいました。
実物件があるのかな?と思っていましたが、まさにその通りでした。謎がセミナー後に分かります。
地図の説明が終わり、地盤判定を誤ると建物にどんな事故・被害が起こるか、の話になると、更にみなさん前のめりです。
各地盤補強工法の特徴や施工方法になるとより一層熱が上がるのを感じます。
土地条件図で何かを確認していた方もメモを取ったり頷いたりされています。
これは、実物件で補強工法の選定に悩んでいるのかな・・?
セミナーが終わると、恒例の地盤相談会です。土地条件図を確認していた方が真っ先に曽根氏に相談されていました。
タイトルの通り、S造3階建ての地盤補強の方法で悩んでいるとのことです。S造の独立基礎なので接地圧は50kN/㎡と重めで、しかも・・・
地表から軟弱地盤が続き、支持層が30m過ぎまでない!
ですよね、この地域は・・・。
セミナーには会場周辺地でお仕事をされている方たちが集まっているので、越谷・草加・川口など低地の軟弱層の厚さは皆様よくご存じです。
ただ、今回は建物が重いので中間層で止めるような補強工法は選択できません。しかも、液状化対策の効果も見込みたいというご希望もあります。すると、
鋼管杭を堅固層まで打つ
ということになります。想像通り高額になりまして、何か策はないかというご相談でした。
まず、本当に支持層が30m以深なのか。
杭の長さ(数量)は気になりますよね。
近隣ボーリングデータは同じ地形のものを見なければなりません。
計画地の地形を確認するために土地条件図を熱心に見ていらっしゃったようです。
そうですね、支持層はかなり深くなりそうです。
次に、施工費を抑える手立てはないのか。
この計画は、S造3階建て。しかし、エキスパンションジョイントで一部平屋がくっついています。
この平屋部分を耐圧版にして表層もしくは中間層までの補強ができないか、というご質問をいただきました。
さすがです!さすがの基礎計画です!
エキスパンションジョイントで繋いであると、3階建てと平屋の基礎の縁は切れています。
つまり、別々の建物と考えられるので異種基礎にはなりません。ですから、
3階建ては鋼管杭、平屋部分は柱状改良もしくはその他工法でも可能。ということになります。
平屋部分を耐圧版にし接地圧が軽くなれば、シート系の採用も可能になります。
あとは、液状化対策も見込みたいということでしたし、建物が重いことも考えると、敷地内で標準貫入試験と室内試験を行うことが望まれます。
調査箇所は、地形が平坦地であることが確認でき、地層は水平堆積と推察できますので、敷地中央1箇所で十分と思われます。
大きな建物になると急に地盤に不安を覚えますよね。
でも、軽いと思っている木造2階建てでも地盤の事故は起きています。
建物の重さを正確に把握し、的確な地盤判断と基礎設計を行う必要があります。
次回の地盤塾プレセミナーは
3月28日(木)大宮です!
詳細はこちら☟
武蔵小杉 地盤塾プレセミナー
地盤塾プレセミナー 神奈川月間二日目!
8日(金)は日建学院・武蔵小杉校で行われました。
ということで、実は開催会場が変わる都度、
資料を作り変えているし、話すことも変わっています!
そして、作って話しているのは曽根氏です(^^)。
↓この方ですね。
(実は武蔵小杉の写真を取り損ねて、これは横浜校での写真です・・)
今回も20名近くのお申し込みがありました!年度末ということもあり、欠席された方もいらっしゃいましたが・・・
地盤塾なんて何者か分からない、という方がほとんどの中で、
建築士の地盤の説明責任に言及し勉強する必要性を訴えて、
参加者を募ってくださった日建学院さんには感謝です!
セミナーの後には地盤相談会です。
今回は地盤リスクではなく、実物件の「埋め戻しと再転圧」の相談でした。
地盤調査の結果、建物配置の大部分が良好で一部が弱い場合、
「一部深め掘削・再転圧の上、直接基礎で支持可能」
という判定結果が出ることがあります。よくある判定文です。
しかし、じゃあ一体どれくらい深くまで掘ればいいの?とか、
掘削した土で埋め戻していいの?とか、
転圧機はなにを使えばいいの?とか疑問(不安?)が出てくると思います。
判定した地盤会社さんが明瞭に指定してくれると助かりますが、地盤会社さんのほとんどは「建築士の判断に任せる」として「ぼやかしている」場合が多いのではないでしょうか。
ぼやかすのはなぜでしょう?
実は、「地盤の最終判断は建築士である」ということと、「掘削・再転圧は基礎地業」という事実があるからなのです。
地盤会社の判定は「専門家による提案」です。きっちり掘る深度と範囲と材料と転圧方法を書いても良いのですが、「掘削・再転圧」は地盤補強工事と違い基礎工事の分野に入るので地盤会社は明言を避けているのです。地盤会社がそこまで書いたら越権というか「基礎工事をやりづらいだろうな」と配慮しているところもあると思います。
ですが、ただ単に転圧方法を知らないだけ、という会社さんも残念ながら一部に存在します・・。
ちゃんと判断でき、ちゃんと設計・施工・管理できる地盤会社さんは、安さだけが売りの「知らない」地盤会社さんと一緒に比べられると成す術がありません。
配慮してくれているのか、知らないだけなのか、
地盤会社さんの見極めもできるようになりたいですよね。
ちなみに、埋め戻し材料は掘削深度によって決められます。
0.5mまでは砂質土・山砂・砕石、0.5mから1.5mまでは山砂・砕石、1.5mから2.0mまでは砕石です。2.0mを超えると土工事になり土留め工が必要になります。
転圧機はランマー以上の能力をもつ機械を使用します。
転圧のポイントは「撒き出し厚は30cm、材料が沈みこまなくなり平滑になるまで」です。
再転圧は適正な材料・撒き出し厚・転圧機で管理しないと事故に繋がります。
しっかり施工しましょうね。
次回の地盤塾プレセミナーは
3月26日(火)日建学院南越谷校です。
詳細はこちらまで☟
地盤塾 ブログ開設しました!
地盤塾は今までFacebookのみで情報を発信していましたが、
Facebookでは投稿が少し古くなるとどんどん埋もれてしまうので、
情報発信をもっと持続的に行いたい!
と思い、ブログを開設することにしました!
地盤塾は、戸建て住宅の地盤を専門とした会員制の塾です。
住宅を建てる(基礎を作る)前にやることは、
地盤が良いか悪いか、判断すること
です。それは地盤調査を行って判断します。
地盤が良ければそのまま基礎を作り始められるし、
地盤が悪い場合は何かしらの対処(地盤補強工事)をしなければいけません。
では、なぜ地盤が悪いと何かしらの対処が必要なのでしょうか。それは、
地盤が悪ければ、
建物がいくら頑丈でも傾いてしまうから。
なのです。
ということは、つまりこう言い換えることができます。
地盤の良し悪しを判断する目的は、
お施主様の大事な家を傾かせないためである。
なので、家を建てるなら
足元である地盤もしっかり考えないといけませんよね。
けど、地盤はなんだか難しそう、と敬遠されがちです。
地盤塾の講師である曽根や千葉(私)は、
数万~数十万件の地盤を判定・補強提案してきた実績を活かし、
住宅地盤に関する知識・技術のセミナーや、
事業者オリジナルの地盤ユーザーセミナーを行ったり、
案件毎に個別相談を受けたりしています。
地盤調査・地盤判定は、
現況測量のついでや
契約のお礼無料サービスで
やるものではないのです。
建物を傾かせないために行う、
重要な家づくりのプロセス
なのです。
これから、地盤に関する様々な情報を発信していきます。
どうぞよろしくお願いします。